給与所得控除改定2021年1月より

所得控除とは、所得税の計算においてある一定の要件に当てはまる場合に所得の合計から一定額を差し引くことができるという仕組みで、基礎控除や扶養控除、医療費控除など合計で14種類あります。

たとえば、同じ年収でも子どもがいる世帯では、いない世帯に比べて教育費や生活費がかさみますし、持病で定期的な通院が必要といった世帯では、通院のために医療費がたくさんかかります。そこで、その分を所得から控除することで税負担を減らせるよう、子どもがいる場合は扶養控除が、医療費が一定額以上の場合は医療費控除が受けられるようになっているのです。

なお、同じ所得額であれば所得控除が大きいほど、納める所得税額は小さくなります。

所得控除のうちの一つである「基礎控除」は、職業や扶養者の有無に左右されず、誰でも一律で受けられる控除です。これまでは所得の大小にかかわらず一律38万円でしたが、今回の改正により10万円引き上げとなり、原則48万円に。

一方で、高所得者にも一律で控除を適用する必要はないという意見(いわゆる“金持ち優遇”への批判)により、高所得者については合計所得が2,400万円超~2,450万円以下だと32万円、2,450万円超2,500万円以下だと16万円と段階的に引き下げられ、2,500万円を超えると控除はゼロになりました。

一方で、給与等の収入金額が850万円を超える場合には要注意です。というのは、改正前の上限が給与等の収入金額(給与等の収入金額 =給与等の総支給額から通勤手当などの非課税所得を引いたもの)1,000万円超で給与所得控除額220万円だったのが、改正後には給与等の収入金額850万円超で給与所得控除額195万円になったためです。

つまり850万円超になると、給与所得控除の引き下げ額が10万円を超えるため、基礎控除の10万円アップでは引き下げ分を補えなくなり、増税になってしまうからです。

 

今回の所得税基礎控除・給与所得控除の改正は、基礎控除が10万円アップし給与所得控除が関係がない個人事業主フリーランス)にとってはうれしい改正といえます。

それに対して、会社員の場合、給与等の収入金額が850万円を超えると、税負担が重たくなることに(年収1,000万円で数万円の増税)。
しかも、給与所得控除の上限が適用される収入は、2013年に1,500万円超だったものが、2016年には1,200万円超、2017年には1,000万円超、そして今回が850万円超と下がってきており、今後もさらに下げられる可能性もないとは言い切れません。そうなれば、「そんなに収入が多くないから関係ない」とは言っていられなくなるかもしれません。

所得税は給与から引かれるため、会社員にはその影響がわかりづらいのですが、実はせっかくベースアップした給与が税金の負担増によって無いも同然になってしまう、なんていうことも。税制改正は毎年行われますので、その発表内容に今後も注視するようにしましょう。